- 移動平均線って何?
- 具体的にどうやって使うの?
- 移動平均には他に種類があるの?
これらの疑問について解説します。
移動平均線とは
移動平均線は、過去一定期間の価格の平均を算出し、チャート上に表示することでトレンドを視覚的に捉えるためのインジケーターです。
移動平均線の目的は、価格の変動を滑らかにし、トレンドの方向性を明確にすることにあります。これにより、トレーダーはトレンドの転換点や持続性を判断しやすくなります。
移動平均線の種類
移動平均線にはいくつかの種類があり、それぞれ計算方法や特徴が異なります。
単純移動平均線(SMA)
単純移動平均線(SMA)は、一定期間の価格の平均値を連続して計算し、線で結んだものです。
例えば、5日間の単純移動平均線(5日SMA)の場合、以下のように計算します。
この値をチャート上にプロットし、次の日のSMAも同様に計算していくと、SMAの線が形成されます。
[価格]部分は、始値/高値/安値/終値 どれを採用しても構いません。使い道に応じて変えてください。
SMAは、他の移動平均線に比べて、全てのデータポイントが同じ重みを持つため、計算が簡単で理解しやすいという特徴があります。
指数移動平均線(EMA)
指数移動平均線は、直近のデータに重みを置いて計算される移動平均線です。これにより、最新の価格変動に対して敏感に反応するため、トレンドの把握がより迅速に行えます。
最新の価格に対して敏感に反応させるメリットは、SMAに比べて、トレンドの変化を早期に把握できることです。
例えば、市場が急に上昇し始めた場合、EMAはSMAよりも早く上向きになります。これにより、トレーダーはトレンドの初期段階でエントリーすることができます。
短期的な価格変動が重要なデイトレードやスキャルピングに適しています。
加重移動平均線(WMA)
加重移動平均線は、各データポイントに異なる重みをつけて計算される移動平均線です。直近のデータにより大きな重みを与えることで、価格変動に対する感度を高めています。
重みをつけるという点では、EMAと同じです。EMAよりも重み付けを柔軟に設定でき、より価格変動を敏感に捉えることができます。
移動平均線の計算方法
説明の流れとして計算方法を乗せますが、インジケータを自作とか、より詳しく値の仕組みを知りたいという場合以外は読み飛ばしてもらって構いません。
SMAの計算方法
単純移動平均線は、指定期間の価格の合計をその期間で割ることで求められます。
簡単な例で説明します。
例えば、ある株の5日間の終値が次の通りだったとします。
- 1日目:100円
- 2日目:105円
- 3日目:110円
- 4日目:115円
- 5日目:120円
この場合、5日SMAは次のように計算されます。
つまり、この株の5日間の単純移動平均線の値は110円です。
この値をチャート上にプロットし、次の日(2日目~6日目)のSMAも同様に計算してプロット、という風に繰り返していくことでSMAの線が形成されます。
EMAの計算方法
指数移動平均線は、以下の式を用いて計算されます。
※N=移動平均の期間
最初の価格は、SMAを使用し、その翌日以降は、上記の計算で求めます。
具体例を使って説明しましょう。5日間のEMAを計算する場合を考えます。
・初日の計算
まず、5日間のSMAを計算します。ここでは、以下のような株価があるとします。
- 1日目:100円
- 2日目:105円
- 3日目:110円
- 4日目:115円
- 5日目:120円
5日間のSMAは以下のように計算されます。
この110円が最初のEMAとなります。
・翌日以降の計算
次に、6日目の価格が125円だったとします。この場合の5日EMAは以下のように計算します。
まず、平滑化定数を計算します。計算式の↓の部分です。
次に、6日目のEMAを計算します。
6日目の5日EMAは約115円です。
WMAの計算方法
加重移動平均線は、各データポイントに重みをつけて計算します。
重みは通常、最新のデータに大きく設定されます。
具体的な例を用いて、5日間のWMAを計算してみましょう。
ステップ1: データを集める
例えば、次の5日間の価格データがあるとします。
- 1日目:100円
- 2日目:105円
- 3日目:110円
- 4日目:115円
- 5日目:120円
ステップ2: 重みを決める
5日間のWMAを計算するために、各日のデータに次のような重みを付けます(最新の日から重みが大きくなるようにします)。
- 1日目の重み:1
- 2日目の重み:2
- 3日目の重み:3
- 4日目の重み:4
- 5日目の重み:5
ステップ3: 価格データに重みを掛ける
各日の価格にその日の重みを掛けた値を計算します。
- 1日目:100円 × 1 = 100
- 2日目:105円 × 2 = 210
- 3日目:110円 × 3 = 330
- 4日目:115円 × 4 = 460
- 5日目:120円 × 5 = 600
ステップ4: 重み付き価格の合計を計算する
重み付き価格の合計を計算します。
100 + 210 + 330 + 460 + 600 = 1700
ステップ5: 重みの合計を計算する
重みの合計を計算します。
1 + 2 + 3 + 4 + 5 = 15
ステップ6: WMAを計算する
重み付き価格の合計を重みの合計で割ります。
したがって、5日間の加重移動平均線(WMA)の値は113.33円となります。
移動平均線の実践的な使い方
移動平均線は、トレンドの把握やサポートとレジスタンスの確認、売買ポイントの発見に役立ちます。
トレンドの把握
移動平均線の傾きや位置関係を観察することで、上昇トレンドや下降トレンドを識別できます。
移動平均線が上向きであれば上昇トレンド、下向きであれば下降トレンドと判断します。
サポートとレジスタンスの確認
価格が移動平均線に接近すると、そのラインがサポートラインやレジスタンスラインとして機能することがあります。
これにより、エントリーポイントやエグジットポイントを見つけやすくなります。
このようなことが起きるのは、多くの投資家が移動平均線を用いているからで、トレーダーが特定の移動平均線を注視し、その水準で反応するため、価格もその水準で反発や反転しやすくなるということが起きます。
売買サイン(クロスオーバーシグナル)
短期移動平均線が長期移動平均線を上抜けると「ゴールデンクロス」、逆に下抜けると「デッドクロス」と呼ばれ、トレンド転換のシグナルとして利用されます。
移動平均線を用いたトレード戦略
短期移動平均線と長期移動平均線の組み合わせ
短期と長期の移動平均線を組み合わせることで、トレンドの持続性や転換点をより正確に把握できます。たとえば、20日移動平均線と50日移動平均線を組み合わせる、というような形です。
短期/中期/長期として、10日/20日/40日という風に3本組み合わせるパターンもあります。
ゴールデンクロスとデッドクロス
ゴールデンクロスは買いシグナル、デッドクロスは売りシグナルとして利用されます。これらのシグナルを確認したら、トレードを実行するタイミングを計ります。
ただし、このシグナルは絶対ではありません。あくまで目安です。問題は後述します。
他のインジケーターとの併用
移動平均線は他のインジケーターと組み合わせて使うことで、トレードの精度を向上させることができます。例えば、RSIやMACDとの併用が効果的です。
移動平均線の注意点と改善方法
移動平均線を使用する際の注意点として、遅行性やダマシシグナルの存在があります。
遅行性の問題
移動平均線は過去のデータを基にしているため、価格変動に対して遅れが生じます。この遅行性を考慮してトレードする必要があります。
ダマシシグナルの対処法
移動平均線のクロスオーバーシグナルは必ずしも正確ではありません。
下記のように、クロスはするが、一向にトレンドが発生しないことも多々あります。
ダマシシグナルを避けるためには、他のインジケーターと併用したり、複数の移動平均線を使って確認することが重要です。
パラメータの最適化
移動平均線の期間を何日にするのが最適か?という設定はトレード戦略に合わせて調整する必要があります。バックテストを行い、最適なパラメータを見つけることでトレードの精度を高めることができます。
バックテストの方法は下記の記事を参考にしてください。
まとめ
移動平均線は、FXトレードにおいて非常に有用なインジケーターです。
そのシンプルさから初心者でも使いやすく、トレンドの把握やエントリーポイントの決定に役立ちます。
しかし、遅行性やダマシシグナルに注意しながら、他のインジケーターと組み合わせて使用することで、より精度の高いトレードが可能となります。継続的な学習と実践を通じて、移動平均線を効果的に活用し、トレードスキルを向上させましょう。